TRAM/御所ケ谷トラムへ
夕方TRAMさんへ行く。御所ケ谷のゆるい坂道を同じセーラー服の生徒たちが列をなして下ってくる。この学校へ通ったわけでもないのに不思議に懐かしい気持ちになる。
「よほど遠い過去のこと、秋から冬にかけての短い期間を、私は、変な家庭の一員としてすごした。そしてそのあひだに私はひとつの恋をしたようである。」
高校時代に出会った尾崎翠「第七官界彷徨」(昭和6年) はこんな書き出し。全編隅々にいたるまで鮮やかなポエジーにあふれ、今も圧倒的に新しい。毎日の生活でいつしか見失い、忘れはてたもの。もっと正確にいえば忘れたふりをしていたもの。ふとしたきっかけで思い出す。
そういえば平尾山荘通りの森に一つの古井戸があった。あるとき何気なくのぞきこむと木漏れ日の筋が射し込み水面がガラスのように光っていた。



















