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2010年3月24日 (水)

日記

何処か美しい海辺の家に住み、夕暮れに灯台の近くまで散歩に出る。たまに波打ち際で小さな形の良い木切れを見つけて帰る...。

そんな生活にあこがれたけど当分実現しそうにない。

気が向くとキャナルシティから平尾の家まで歩いて帰る。巨大なショッピングモール周辺は意外にも古い町並みが残り、路地裏散歩が楽しい。美野島商店街のプラスチックざるに盛られたバナナ、何と呼ぶのかクルクル回る幼児絵本のラック、まぶしい夕日を浴びながら西に向かって歩いていく。やがて店が途切れ、橋の上に出る。那珂川の河口が大きく開けて気持ちいい。潮風が吹いてくる。河辺の小さな公園で年配の男達が昔風に卓を囲んで将棋を指していた。

渡辺通りを横切り薬院までくると街の雰囲気がガラリと変わる。ビジネス街。大きなビルが増える。
周りが騒がしくなりすぎたのか、昔ながらの古本屋が郊外に移転すると張り紙があった。ここでいくつかの宝物を見つけた。伊東静雄詩集はカバーなし200円。

だあれもまだ来ていない
机も壁もしんとつめたくて
部屋の隅にはかげが沈んでゐる
自分の席にこしかけて
少女は机のうへの花瓶の花に
さはつてみる
時計が誰のでもない時をきざむ
何とはなしに手洗いにいく
そこのしろい明るさのなかに
じぶんの顔がかがみの奥にゐて
素直にこちらを見る
そのガラス窓につけると
大川が寒い家竝の向ふで
こいい靄をたてて
こぶこぶの鈴懸の列が
ねむたさう
ふいに「春が来るんだわ」
とわけもなく少女は思ふ
すると
すんと外の景色がわらつて
ビルのその四階の窓へ
めくばせした
そして一帯に朝の薄陽が射す

[『伊東静雄詩集』より「無題」]

夜電話をとると、古い友人の懐かしい声。久しぶりに休暇をとって帰郷するという。
来月某日、場所は天神とだけ決め電話を切った。

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